PHOTOGRAPHIC SESSION

「残念ながら、TOKYO HIPSTERS CLUBは、誰にでも似合う便利なファッションではない」――T.H.C.の"MANIFESTO""MANIFESTO"は、このような一見突き放したような一文ではじまる。そして、このように終わる。「どう着こなすかではなく、どう生きるか、である。服はいつも、人の生き方に従い、ついてくるだろう」。
その定義を検証すべく、ふたりのカメラマンが挑んだのが本展だ。ひとりはT.H.C.のクリエイティブ・ディレクターでもある、藤本真樹。もうひとりは、新進気鋭の写真家、森本勝英。T.H.C.が東京のヒップスターだと考える16名をモデルに迎え、7月の長雨の中、その肖像をカメラに収めた。
たとえば、戸井十月。イラストレーター、フリーライターを経て、現在ルポライター、小説家、映画監督、テレビドキュメンタリーディレクターと多彩な顔を持つ。83年、バイクで北米大陸を縦横断してから、20年間で訪れた国は50数ヶ国、走行距離 は25万kmを超え、世界のオフロードバイクレース出場も多数。チェ・ゲバラに関する著作を多くもち、最新刊『遙かなるゲバラの大地』は、56歳にして南米大陸30,000km、120日間の、ゲバラを辿る旅の記録だ。
たとえば、フラワー・アーティスト、東信。音楽の道を目指し上京したが、そこで花という魅力に出会う。以降、全くの独学にて花と向き合い続け、現在、東京・銀座に日本初のオートクチュール花屋『JARDINS DES FLEURS』を構える。「モードの世界にいちばん近いフローリスト」として一流メゾンのウィンドーのほか、映画やCMなども幅広く手がける。2005年にはニューヨーク、パリで個展を開催、国内外から注目を集め、2006年11月にはパリにあるカルティエ現代美術館でのプログラム『ソワレ・ノマド』に招聘されている。
そのほかにも、日登美、数見肇、信國太志、愛川誠次郎、岡佐和香、桑原廷享、宮城健太郎、林ヒロ子、曽我部恵一、HIKARU BRUNDLAND、辛酸なめ子、KUJUN、MADSAKI、石川直樹と、多彩な顔ぶれが並ぶ。それぞれ自分なりに「どう生きるか」を意識し、体現している方々ばかりである。彼らが着るT.H.C.の服は、決してそれ自体が強く主張することはない。「袖を通した一枚の服がどう見えるか、何を語るのか。その一点はすべて、あなた自身の内面に委ねられている」。彼らのそれぞれの個性豊かで奥深い内面が映し出された写真の中で、それぞれの身に着けている服も様々な表情を見せている。

加速的に高度化する現代の消費社会において、「誰にでも似合う」ことや「便利」であることは、効率を追求するあまり、往々にして選択されがちだ。しかしT.H.C.の考えるファッションには、あくまで「生き方」が先にある。部屋を取り囲むように並べられた16枚の写真から滲み出たそれぞれの「人」が、その宣言を高らかに証明していた。
文:内沼晋太郎
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