Outside of society


ルーツをたどることで、理解が深まる。たとえば、いまや世界的な商業的成功をおさめ、ここ日本でも国内のバンドに引けをとらない人気を誇るロックバンドU2も、デビュー前はニューヨーク・パンクの最重要バンド、テレヴィジョンのコピーバンドからスタートしている。
いまのU2の音楽からその片鱗を聴き取るのは容易ではないが、例えばその「U2のルーツにはテレヴィジョンがある」という事実を知ることによって、音楽の世界が広がり、より多くのものを感じとることができるようになる。そして同時に、この先に生まれるべき音楽に、思いを馳せることもできるかもしれない。
今回THCで行われた展覧会<‘Outside of society’ニューヨーク・アンダーグラウンド展>について、音楽評論家の鳥井賀句氏は以下のように述べている。「60年代末のヴェルヴェット・アンダーグラウンドから70年代初期のニューヨーク・ドールズへと続き、その種子から花開いた70年代後期のパティ・スミス、テレヴィジョン、リチャード・ヘルらのNY PUNK ROCKのロック詩人たち。その背景にも50年代のバロウズやケルアック、ギンズバーグら、ビート・ジェネレーションから連綿と脈打つヒップスターズの詩精が存在していた。規制社会からのニガーたれと叫んだパティ・スミスを中心に、ニューヨークアンダーグラウンド・ロックとビート・ジェネレーションの決して切り離されぬ関係性にスポットを当ててみたい。」すなわち、本展は「ルーツとしてのニューヨーク・パンク」と「ニューヨーク・パンクのルーツ」の両方について知るための展覧会であった、と言うことができるだろう。
階段には、写真家・松本誠司氏が撮ったアーティストのオフショットが展示。そして部屋には、彼らの代表的な詩作が、大きな存在感を持って壁に飾られた。詩の記されたパネルの背後には、若手アーティストDARK FUNK SPOTによる、当時をイメージしたアートワークがペイント。そして逆の壁側には小さなテレビから、リチャード・ヘル主演の映画『ブランク・ジェネレーション』などが流されていた。

"I was sayin let me out of here before I was
even born--it's such a gamble when you get a face
It's fascinatin to observe what the mirror does
but when I dine it's for the wall that I set a place
I belong to the blank generation and
I can take it or leave it each time"
(RICHARD HELL / Blank Generation)
"blank generation"という表現は、当時のニューヨークのアンダーグラウンドシーンを象徴する言葉のひとつであり、伝説のライブハウス「CBGB'S」に集まるミュージシャンたちが好んで口にしていた。"I can take it or leave it each time"――「その場限りでどっちでもいい」。今の東京を生きる若い世代の空気感と、それは共通するものがあるかもしれない。その中でどう足掻いていくことができるか。そのためのヒントが彼らの言葉に隠れているということ、そして、どうして彼らがいまのアーティストたちのルーツ足り得るのかということを、本展は静かに物語っていたのである。
文:内沼晋太郎

9月2日(土)には、鳥井賀句氏(写真右)の TOKYO HIPSTERS SCHOOL Vol.2 〜ニューヨークアンダーグラウンド・ロックの詩人たち〜
が開催され、会場は約50人の人々で賑わいました。
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