MAI68展


T.H.C.の壁にはオープン当初から、'ATELIER POPULAIRE'(人民の工房)によるスローガン・ポスターが飾ってある。彼らは1968年5月当時、美術学校を占拠し、デザインから印刷までをそこで行い、一日に何千枚ものポスターをパリの街中にばら撒いていった。
美大生を中心として有名なアーティストも多数参加していたといわれているが、無名性を重視していたため、それぞれが誰の作品かという記録はまるで残っていない。しかし、それらはどれもすべて同じ時代の空気を吸い込んだ、高い作品性を感じさせるものに仕上がっている。
本展は、T.H.C.が当初からテーマのひとつとしてきたその「パリ五月革命」に関して、第一弾DVDとしてウィリアム・クライン『革命の夜、いつもの朝』をリリースすることとなり、その先行試写を兼ねて行われた<パリ五月革命=MAI68>の展覧会である。壁には当時の写真と前述の'ATELIER POPULAIRE'のポスターが展示され、発売前(3月リリース予定)の映像がプロジェクションされた。また、中央のテーブルには関連の書籍やグッズなどが陳列され、自由に閲覧できる。

ウィリアム・クラインは1928年ニューヨーク生まれの写真家/映画監督である。1954年にヴォーグのアート・ディレクターだったアレクサンダー・リーバーマンに抜擢され、ファッション写真家としてキャリアをスタート。1956年に発刊した写真集『ニューヨーク』で、従来の写真の常識を覆すアレ・ブレ・ボケを多用した写真を発表し、その後ものちの写真家に影響を与える作品を多く残した。しかし1965年から1978年までは写真家としての活動を休止し、映画作成に専念。『革命の夜、いつもの朝』はまさにその間、1968年5月の革命に揺れるパリを撮った、貴重なドキュメンタリーだ。
また、本展の開催とDVDのリリースを記念して12月20日、トーキョー・ヒップスターズ・スクールが開催された。2部構成で、前半は村山匡一郎氏による「1968年とフランス映画」。ヌーヴェルヴァーグの映画監督たちを五月革命の発端ととらえ、カンヌ映画祭の中止騒動と当時の映画について話された。後半は詩人の駿河昌樹氏による「ドンナことばモ、ソレナリニ抵抗ナンダト思ウ、(ふらんすノモ、今ノにっぽんノモ、ぼくノモ)、」。日本の中世の女性に、五月革命をはじめとする近現代のさまざまなユートピア思想の到達できなかった「自由」をあっさりと見出した上で、五月革命の経緯を時系列で詳細にレクチャーした。

トークに集まった人々も、展覧会を観に来ていた人々も実にそれぞれで、特にこういう客が多く訪れていた、ということはない。政治に対して若者たちが反旗を翻すことなどほとんどない、この東京のファッションを代表する街で、こういった展覧会がさまざまな人たちの関心を集めたことは意義深いだろう。
文:内沼晋太郎


