BRIAN truth UK
BRIAN truth UK~ブライアン・ジョーンズ ストーンズから消えた男~
あなたがローリング・ストーンズのファンではなかったら、ビートルズといえばジョン・レノンやポール・マッカートニーであるように、ストーンズといえばミック・ジャガーやキース・リチャーズ、と答えるかもしれない。ブライアン・ジョーンズという男のことも、名前に聞き覚えくらいはあるだろうけれど、特にここ日本での知名度はそれほど高くない。ストーンズを発足させて初期の音楽性を形作ったリーダーであり、60年代を象徴する天才プレイヤーであり、謎の死を遂げて文字通り「ストーンズから消えた男」であるということを、どれだけの人が知って、あるいは憶えているだろうか。
本展は、そのブライアンの栄光と挫折をいまこそ、より多くの人に知ってもらうことを目的に開催された展覧会である。まず壁面には、ブライアンの死の2日後、1969年7月5日に行われた、伝説のブライアン・ジョーンズ追悼『ハイド・パーク・コンサート』と、ブライアン在籍時のストーンズ最初期のライブ映像が、タイムテーブルが組まれ交互に映し出される。また試聴用のiPodからは、初期のストーンズのアルバムからブライアンの演奏が顕著に聞き取れる曲をまとめたものと、唯一のソロアルバム『THE PIPES OF PAN AT JAJOUKA』が流れる。ブライアンが愛用していたVOX社のギターやアンプも展示され、オリジナルの紫色のアンプは会場にて販売もされている。プレイヤーとしてのブライアンの姿を感じ、その才能をあらためて知ることができる展示だ。
また会場中央には、今夏公開の映画『ブライアン・ジョーンズ ストーンズから消えた男』の中で実際に着用されていた衣装が展示されている。ブライアンにとってのファッションとは、自己表現の方法として一番強力なものだった。彼はストレートな男性でありながら、女性物の洋服やアクセサリーを身に付け、また古いものと新しいもの、ドメスティックのものとインポートのものなどを、性別やジャンルを超えて自由に組み合わせ、あらゆるファッションを個人の自己表現へと転化できる才能を持っていた。そのイギリスのポップ・スターの原型とも呼ばれ、一般大衆もヒッピーたちも真似した彼のスタイルを中心として、ほかの登場人物に見られたような当時のリアルなファッションを、この空間に蘇らせている。同時に壁には、その映画のスチール写真も展示されている。

また7月21日の夜には、音楽評論家鳥井賀句氏によるトークショー「鳥井賀句のHIPSTERS SCHOOL Vol.1 ブライアン・ジョーンズという男」が開催された。ストーンズ関連の書籍の編集なども手がけ、他にもDJ、映画評論家、ミュージシャンとして幅広く活動をしている同氏が語るブライアンの姿は、独自の視点でありながらも鋭い説得力を持って、会場に集まった多くの人々の心に強く刻まれた。
ブライアン本人の経歴などについては、ぜひ映画や書籍などを通じて深く知っていただきたいので、ここであまり多くは触れない。ただひとつだけ言うとするならば、生涯を通じて一貫して快楽主義だったブライアンの姿は、まさに60年代の若者を象徴していたということだろうか。世界じゅうに満ちあふれる可能性と表裏一体の、純粋さを持ちながらも未来に対して楽観的なままいつしか異性やドラッグに溺れていき、最後は自己破壊的なところにたどり着いてしまう危険性。それこそが「60年代」であり、ブライアンの謎の死が、若者たちにひとつの時代の終焉をつきつけたと言うこともできるほどだ。ストーンズから消えると同時に、ひとつの「60年代」を終わらせた男。彼の姿を広く知らしめるきっかけとして、本展の果たした役割は決して小さくない。
文・内沼晋太郎
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