POETRY READING FOR THE MEMORY OF ALLEN GINSBERG
アレン・ギンズバーグ展 / 朗読会:ギンズバーグの想い出に

アレン・ギンズバーグアレン・ギンズバーグは、ビート・ジェネレーションを代表する詩人であり、カウンター・カルチャーのルーツを作った、THCのコンセプトの中核にいる人物のひとりである。THCがオープンして約半年経った3月10日、アレン・ギンズバーグ展は、THCの主催によって満を持して開催された。
部屋に入ろうとしたときにまず目に付くのは、天井からぶら下げられたいくつかのボードである。「Howl」をはじめとするギンズバーグの代表的な詩もしくはその一節が書かれているのだが、透明のアクリル版には英語の原詩が、和紙をベースにしたボードには日本語で翻訳が、それぞれプリントされて2枚セットになって吊るされており、強めの照明があてられ、アクリルの英語が日本語にちょうど対応するように影を落としている。これが部屋中に点在し、空間の中で最も強い印象を放っている。
部屋の正面には、大きく映し出されたギンズバーグの映像が写っている。生前のギンズバーグが最後に日本に訪れた際に、現在のワタリウム美術館にあたる場所で行われた朗読会の映像で、本邦初公開だ。書かれた詩ももちろんだが、それ以上に朗読の名手として名を馳せたギンズバーグの、貴重な朗読映像である。独特の抑揚とリズムが心地よく、やさしく響いてくるギンズバーグの声に包まれ、しばし見とれる。
そして部屋の壁に並んでいるのは写真だ。すべて、ギンズバーグが撮影したものである。ギンズバーグの写真のほとんどは日常の何気ない風景をおさめたもので、同じくビートを代表する作家ジャック・ケルアックやウィリアム・バロウズから、ケルアックが「カメラの詩人」と呼んだ写真家ロバート・フランクまで、交流の深かった人々が数多く撮影されている。彼のカメラがとらえているのは、何か特別変わったものというわけではない。そこには強い感情も特殊な表現手法もなく、ただ自分とその周りにいる人々へのやさしい視線がつたわってくる。
そしてこれらの展示に加え、もうひとつの目玉として、ギンズバーグを追悼する朗読会が開かれた。「POETRY READING FOR THE MEMORY OF ALLEN GINSBERG ギンズバーグの想い出に」と名付けられたこの朗読会は、生前のギンズバーグとステージを共にした白石かずこをメインゲストに迎え、詩人の城戸朱理と英米文学者の遠藤朋之、チェリストの翠川敬基、詩人でバンド「Flight Of Idea」のフロントマン東雄一朗が出演した。

トップバッターの東は、「Flight Of Idea」の曲のリーディングをソロで披露。そして城戸と遠藤は、それぞれギンズバーグについて語り、研究してきた立場から、様々なエピソードを語った。ギンズバーグが擦り切れるまで読んだ詩集のこと、ニューヨークからサンフランシスコに引っ越したときのこと。聴衆に、新たなギンズバーグ像を植えつけた。そして二人の朗読は、城戸が日本語で、遠藤が英語で、最初は交互に、のちに被さるようにギンズバーグの詩を読むという、非常にスリリングなもの。特に遠藤の朗読はまるで映像のギンズバーグが乗り移ったように、声質までが重なって聴こえてきた。そして最後の白石かずこも、生前のギンズバーグのたくさんのエピソードを話し、普段から競演している翠川と朗読。流石の存在感と共に、ステージをあとにした。様々な角度から語られ読まれることによって、身体一つで詩で世界に立ち向かったギンズバーグの姿が、目の前に浮かんでくるような、印象的な一夜となった。
ジャック・ケルアックやウィリアム・バロウズといった作家たちと共に、ビート・ジェネレーションと呼ばれた彼らの思想ないしスタイルは、後に続くヒッピーやパンクなど、全てのカウンターカルチャーの原点となった。最初に「ヒップスター」と呼ばれた彼らの姿は、このTHCにこうして蘇っては、次の世代へまた次の世代へと、脈々と受け継がれようとしているのである。
文・内沼晋太郎
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