Candle JUNE EHIBITION "Skull Hikall"


キャンドルの歴史はとても長く、紀元前の遺跡からもその存在が確認されているほどだ。もちろん長い間実用的な照明器具でもあったわけだが、単に個人の記憶をたどってみても、仏事であれキリスト教の祭儀であれ、あるいは「100万人のキャンドルナイト」といったイベントであれ、何らかの儀式的なものによく使われていることに気づく。これだけ宗派を超えた様々な儀式に、静かで神聖な、祈りのイメージを共通して与えているものは、まず他にないだろう。それだけでもその歴史の長さと、存在の普遍性がどれほどかを感じることができる。
Candle JUNE氏はその名の通り、キャンドル・アーティストである。特に音楽やファッションに関心が高い人であればまず、野外フェスやファッションショー、ライブのステージなどで、ぼんやりとときにシックに、あるいは色鮮やかに光る、彼のキャンドルを観たことがあるはずだ。1994年にキャンドルの制作を始めてからずっと販売や個展の開催を続け、野外音楽フェスでのインスタレーションをはじめとして、様々な空間演出を手がけてきた。

特に2001年に広島で「平和の火」を灯してから、「Candle Odysssey」と称して、争いのあった地を巡り火を灯す旅を始めている。アメリカを横断し、同時多発テロ事件が起こったグラウンド・ゼロに火を灯し、その後侵攻を受けたアフガニスタンへ。その後カンボジアの孤児院、テロ直後のロンドン、そして新潟中越地震被災地の川口町をはじめとした震災地などに訪れた。それらの活動を伝え、人々とコミュニケーションを取る拠点として2005年、代々木上原にショップ「ELDNACS」もオープンした。

そのCandle JUNE氏のエキシビションが、T.H.C.の2階フリースペースにて開催された。彼がかねてから構想していた、頭蓋骨を精密に再現した新作キャンドル“dokurow”を中心に構成されたインスタレーションである。
階段を上がると、通常出入口として使用されている手前側のエントランスは、木製のアンティークなドアで封じられており、中の様子は隙間から少し見えるものの、来場者は奥の入り口から入るよう誘導される。まるで裏側から覗くかのように、古木材で覆われた通路を抜けて会場に入っていくと、そこにはいわゆるギャラリーでの展示という枠を超えた、ひとつの舞台装置のような別世界がひろがっている。向かって右の手前側には大量の黒い蝋燭と、机の上に配置された新作の“dokurow”、そして奥の壁には大量の写真がコラージュされている。中央には木で組まれた十字架があり、その向こう、向かって左の奥は藁が敷き詰められた小屋になっており、まるでキリストが生まれた場所を暗示するかのように奥には仔牛の置物が置かれ、そこに敢えて電灯で内側から照らされた色鮮やかなキャンドルと“dokurow”とが並べられている。現実社会と想像上の世界とを一度に見せつけられたような、不思議な感覚に陥る展示だ。
初日に行われたオープニングパーティも、多くの来場者で賑わった。彼の火を灯す旅は、まだまだ続いてゆく。

文・内沼晋太郎


