68


1968年。20世紀で最も有名な年といっても過言ではない。世界各地で同時多発的に起こった革命への息吹、カウンター・カルチャーのひとつの成熟――経験した世代には色濃い記憶として、経験していない世代には歴史の転換点として、今なおその余波が長く続いている。
THCでは昨年、「MAI68」という展覧会を開催した。いわゆる「パリ五月革命」を題材とし、THCからリリースされたDVD、ウィリアム・クライン『革命の夜、いつもの朝』の先行試写を兼ねて行われた。当時のパリを撮った写真のほか、THC店内に今も飾られている「ATELIER POPULAIRE(人民の工房)」によるアジテーション・ポスターなどが展示された。
そして今回、2008年6月29日から7月21日まで開催された「68」は、ところ変わってアメリカはシカゴが題材である。特にパンク・ロックの先駆として、イギー・ポップ率いるステゥージズと並び紹介される伝説のバンドMC5と、その論理的方向性を示唆しマネージャー的役割を果たしたジョン・シンクレアを通して、その時代をまた違った角度から浮き彫りにすることを目的に開催された。
会場に入ると、まずいくつかの引用文が目に入ってくる。「われわれは人々を言いなりにする社会を決して容赦しない」というダニエル・コーン=ベンディッドの発言から、「1968年の自由とは、参加することだ」という落書きまで6点。68年がどういう時代だったか、あとで振り返られた言葉ではなく、すべて68年当時リアルに語られた言葉で表現される。

アビー・ホフマンやアレン・ギンズバーグといったアイコンが並ぶパネルに続き、当時のシカゴを撮った金坂健二による写真と、「ヒッピーは発火した」というタイトルのコラムの全文が展示されている。「時代の底が裂けていた。六八年初夏、バークレイの、ある映画作家の家に寄宿したぼくがまっ先に目にしたのは、黒人社会の変貌ぶりだった。」とブラック・パンサーの存在感が増す街の様子、フラワー・ムーブメントとイッピーたちの日々からウッドストック・ミュージック・フェアまでの間に存在した開放感と緊迫感。金坂健二はそれを当時最もリアルに感じ、伝えた第一人者であった。
そして正面の壁には、レニー・シンクレアによるMC5をはじめとするアーティストの写真が額に入って並んでいる。奥の写真にはキャプションがつけられ、ジョンとヨーコ、イッピーの指導者的役割であったレニー・ディヴィス、スチュアート・アルバート、ジェリー・ルービンの3ショット、エレクトラ・レコードの幹部たちとMC5、ストゥージズなどの集合写真、アビー・ホフマン、ホワイトパンサーの女性党員によって組織されたレッド・スター・シスターズ、そしてホワイトパンサーの集合写真、ブラックパンサーのデモ写真と続く。

続く机の上には、ゲイリー・グリムショウによるサイケデリックなデザインのポスターが並ぶ。ジミ・ヘンドリックス、パティ・スミス、ヤードバーズといった名前の中に、もちろんMC5の文字も見られる。ライブの告知のためのポスターを額装したもので、写真とともにこれらも会場で販売されている。そして次の壁は、MC5関連のものの展示。鳥井賀句によるMC5『Thunder Express』ライナーノートよりの抜粋、そして『Kick Out The Jams』のライナーノートが、それぞれ壁に貼られている。その下に、貴重な版違いのレコード・ジャケット。そしてジョン・シンクレアの本『Guitar Army』やCDジャケットなどが、ガラスケースに収められている。
また、前日の6月28日には、鳥井賀句を聞き手にジョン・シンクレア本人が来日してのトークショーが開催され、会場は多くの人々で賑わった。
文・内沼晋太郎


