EL SUEÑO DEL CHE ,NUESTRO SUEÑO

作家・戸井十月氏によって計4回行われた「トーキョー・ヒップスターズ・スクール チェ・ゲバラという名の希望」。カストロとゲバラが率いるゲリラ部隊がバティスタを国外追放に追い込んで数年の、活気あふれるキューバを撮った近藤彰利氏の「60年代のキューバ」写真展。そして同じく戸井氏の南米大陸走破のドキュメント『遥かなるゲバラの大地』の出版を記念した同名の展覧会。
T.H.C.ではオープン当初から、そのバックグラウンドにある精神のひとつの象徴として、チェ・ゲバラをテーマにした企画を何度も行ってきた。そして今回、チェ・ゲバラ没後40周年を記念して行われたのが本展「“EL SUEN~O DEL CHE ,NUESTRO SUEN~O”ゲバラが夢みたもの 私たちが夢みるもの」展である。
「チェ・ゲバラ、フィデル・カストロ、伝説のグランマ号に乗り込む82人が目指したキューバ。そのさき遥かに見た彼らの理想は、ジョン・レノンが『イマジン』に込めた理想。そしていま私たちが思い描くべき理想に他ならないのだと思う。」ディレクターの藤本氏のコメントにはこうある。平和で美しい世界。太古の昔から多くの志ある政治家や革命家、アーティストたちが夢みて、何十年も前にゲバラも夢みて、そうして私たちが今なお、夢みている。それに果たして近づいているのか、それとも遠ざかっているのか。本展は、ゲバラが夢みていたものが何だったのかを知ることによって、私たちがいまどう夢みればいいのか、考えるためのきっかけを与えてくれる展示であったといえるだろう。

会場にはパネルで、ゲバラの自伝や評伝から引用された文章、ゲバラが愛した詩の引用、そしてゲバラやカストロ自身の言葉が、写真とともに紹介されている。印象的なものを以下にいくつか抜粋する。それらの言葉が語る以上に、語るべきことは何もないからだ。
たとえばゲバラがカストロに宛てた「別れの手紙」がある。「いま世界の他の国が、僕のささやかな力添えを望んでいる。君はキューバの責任者だからできないが、僕にはそれができる。別れの時がきてしまったのだ。(中略)君や我が国民に言いたいことは尽きないのだが、その必要はないようだ。言葉は僕のいわんとすることを表現できないし、これ以上は手紙をよごすに値しない。自由を求める人々が、僕のささやかな努力を望む限り闘い続ける。永遠の勝利まで。革命か死か。ありったけの革命的情熱をこめて君を抱擁する。」(抜粋)
また、ゲバラの追悼集会でカストロが行った演説の全文も展示された。「だからこそ、革命家の同志のみなさん!われわれは確信をもって、断固として、未来を眺めねばなりません。だからこそ、楽天主義をもって未来を眺めねばなりません。そして、われわれは、常に“チェ”の実例のなかに、インスピレーションを、闘争のインスピレーション、ねばり強さのインスピレーション、敵に対する非妥協性のインスピレーション、国際主義的な意味でのインスピレーションを捜すことでしょう!」(抜粋)
最後にゲバラが幼い頃より愛読したといわれる、ボードレールの一節を引用する。「この世の幸福な人々に/たとえ彼らの愚かな尊大さを/少しだけ減らすためであっても、/知らせたいのは、/彼らの幸せよりも大きな幸せがあること、/より壮大な、無比の幸せ。」
なお、展覧会のオープニングレセプションには、多くのキューバ関係者をはじめ、ゲバラやキューバに関心を抱く老若男女、幅広い人々が訪れた。キューバの音楽が演奏され、和やかなムードで交流が行われた。また、10月27日(土)の夜には「境域からの声」の題し、田口犬男、杉本真維子、キキダダマママキキ、蜂飼耳、伊藤比呂美、越川芳明によるリーディングイベントが行われた。
文・内沼晋太郎
“EL SUEÑO DEL CHE ,NUESTRO SUEÑO”
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